インテリジェンスのオーケストレーション:エンタープライズAIエージェント構築の新戦略

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AIエージェントを「実験」から「本番運用」へ

AIエージェントは、いま実験段階から実稼働フェーズへと進化しています。
その成否を分けるのはモデルの精度ではなく、エンタープライズオーケストレーションの有無です。

モデル単体では成果を生み出せません。
AIエージェントがデータ・ツール・ポリシー・人を連携させ、統制された形で協調的に動くことで、はじめて企業の業務にインパクトをもたらします。

この記事では、Workato Oneプラットフォーム上のAgent Studioを使って、
エンタープライズレベルのAIエージェント「Genies」を設計・展開する方法を紹介します。
また、パートナー企業Twenty20 SystemsのCTOであるSaravana Kumar氏が実装したマルチエージェント型の受注管理フローもあわせて紹介します。

チャットボットでは実現できないエンタープライズ要件

単なるチャットラッパーとAPI呼び出しの組み合わせでは、
企業業務で求められる要件を満たすことはできません。

エンタープライズAIエージェントには、次の能力が求められます。

  • 各システムからのビジネスイベントを安全に検知する

  • 統制されたナレッジソースを参照して判断する

  • 適切なスキルを確実に実行し、決定を再現可能にする

  • 認証済みの資格情報でアプリケーションにアクションを実行し、監査ログを保持する

  • 例外対応時のみ人間を介在させる

この仕組みを支えるのがAgent Studioです。
Workatoの強力なオーケストレーション機能を基盤に、AIエージェント層を追加することで、
モデル接続・スキル定義・アクセススコープ設定を統合管理し、ガバナンスされたマルチエージェントフローをSlack、Teams、またはWorkato Go(企業向けAI検索基盤)に配信できます。

「新しい同僚」を迎え入れるようにGenieを設計する

AIエージェントを設計する考え方は、人を新たに採用してオンボーディングする流れに似ています。

1. 職務記述(Job Description)

エージェントの目的、責務、KPIを明確に定義。
これがガードレールとなり、「何をもって成功とするか」が決まります。

2. スキル(Skills)

Genieに実行能力を与えます。
Agent Studioでは、Workatoのレシピと同様の形式でスキルを構築。
例:「受注作成」「在庫予約」「住所検証」「売上データ取得」など。

3. アクセス権限(Access)

必要なアプリ・データ接続を付与し、事業単位ごとにスコープを制御。
認証情報はWorkato内で安全に管理・監査されます。

4. イベント(Events)

ERP・CRM・OMS・WMSなどのトリガーを登録。
バッチ処理ではなく、リアルタイムでイベントを検知し反応。

5. ナレッジベース(Knowledge Base)

ポリシー、命名規則、フィールドマッピング、業務ドキュメントなどを登録。
モデルは推論を担い、ナレッジベースが企業固有の文脈を保持します。

参照アーキテクチャ:スーパ―エージェントと専門エージェント

複雑な業務プロセスでは、「スーパ―エージェント」が複数の専門エージェントをオーケストレーションする構成が効果的です。

  • 受注エージェント:注文の検証・補完・例外処理を担当

  • 在庫エージェント:在庫確認・確保・補充トリガーを実行

  • 通知エージェント:承認やステータス更新を担当者へ送信

  • その他専門エージェント:配送・不正検知・価格・コンプライアンスなど

実際の組織と同様に、スーパ―エージェントが指揮し、各専門エージェントが最適に動く構成です。

なぜ受注管理から始めるのか

製造・小売・物流など、あらゆる業界において、受注管理は収益・在庫・顧客体験の交差点に位置する重要プロセスです。
CRMやERP、倉庫・課税・信用システムなど、複数のシステムを横断するため、エージェントオーケストレーションの効果を最も明確に示せる領域といえます。

事例紹介:Twenty20 Systemsによるマルチエージェント型受注管理フロー

フロー概要

  • 受注はポータルまたはCSV経由で登録

  • MCPツールが標準化されたAPIアクションを提供(例:注文作成、製品情報取得)

  • スーパ―エージェントが在庫確認、信用チェック、データ補完、Salesforce登録を順次実行

  • 通知エージェントが結果をメールまたはSlackに送信

  • 人は例外処理のみ対応

3つの主要シナリオ

自動承認:在庫・信用ともに問題なし。注文が自動的に確定。


手動承認:信用スコアが閾値未満の場合、Slackで担当者に承認依頼。承認後、注文を有効化。


在庫不足による却下と補充指示:在庫エージェントが不足を検知し、Workato Go上で再入荷リクエストを起動。補充エージェントが調達を自動進行。

導入効果

  • イベント処理とスキル実行がリアルタイム化し、リードタイムを大幅短縮

  • データ補完と検証が自動化され、ヒューマンエラーを削減

  • 担当者は例外対応に集中できるため、生産性が向上

  • すべてのアクションが監査可能なログとして記録され、ガバナンスを強化

エンタープライズレベルのガバナンスとセキュリティ

GeniesはWorkatoのエンタープライズ基盤上で動作するため、以下の機能を標準で備えています。

  • Genie単位・事業単位でのスコープ制御

  • 資格情報の暗号化・定期更新・監査ログ管理

  • ポリシーベースのナレッジ適用によるコンプライアンス維持

  • ヒューマン・イン・ザ・ループによる安全な意思決定

モデル運用の柔軟性

チャットや推論用モデルはWorkatoプラットフォームに統合可能。
外部LLMとの連携もAPI経由で実行可能です。
機密データはハッシュ化・トークン化を行い、システム上に安全に保存します。

実装者向けガイド:パイロットから本番まで

  • ジョブ記述をテスト可能な形で設計
    「在庫があり、信用スコアが閾値以上の注文を自動承認する」など、明確な条件でKPI化。

  • スキルは小さく、再利用可能に設計
    一つのスキル=一つの成果物とし、テスト容易性を確保。

  • フィールド命名を統一
    ナレッジベースにフィールド名・単位・検証ルールを明記。

  • 例外処理は段階的に追加
    まずは「ハッピーパス」を構築し、徐々に例外や承認を拡張。

  • 主観的判断が必要な箇所に人を配置
    信用判断や利益率確認などは承認フローを組み込み、監査性を担保。

  • ユーザーが日常的に使う環境へ統合
    Slack・Teams・Workato Goなど既存の業務チャネルにGeniesを配置。

Genies活用の次のステップ

多くの企業が、以下の領域で早期成果を得ています。

  • 人事・採用:候補者管理とオンボーディングの自動化

  • IT・セキュリティ:インシデント対応とチケット分類

  • 営業・サポート:リードスコアリングと顧客対応最適化

  • CPQ業務:見積・承認・価格算出の自動フロー

今週から始められるAIエージェント構築ステップ

  1. 明確なルールを持つ業務フローを選定(例:受注、採用、営業フォローアップ)

  2. Genieの職務記述とKPIを定義

  3. 小規模スキルで「ハッピーパス」を実装

  4. 必要最小限のナレッジのみをロード

  5. 実チームでパイロットを実施し、承認や例外処理を追加

  6. 複数エージェントが連携する「スーパ―エージェント構成」へ拡張

まとめ:インテリジェンスをオーケストレーションする

AIエージェントを本番で運用するには、モデルやチャットではなく設計・統制・協調が鍵です。
WorkatoのAgent Studioを使えば、Geniesを迅速に構築し、安全に展開できます。
データ、ツール、人をつなぎ、AIがビジネス成果を生み出す環境を実現しましょう。

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