※本記事は Nasdaq.comに掲載された寄稿記事の翻訳版です。
自動化と統合:IT業界の“聖杯”
ビジネスプロセスを自動化し、異なるシステム同士を連携させ「一体として機能させる」ことは、
長年にわたりIT業界が追い求めてきた目標、いわば“聖杯”です。
これまで企業は、業務を自動化し、アプリケーション間でデータをやり取りし、
取引先やパートナーとのプロセスを統合するために、数百億ドル規模の投資を積み重ねてきました。
しかし今後5年間で、企業が取り組むべき自動化・統合の量は、過去5年間を上回ると見込まれています。
その結果、関連テクノロジーへの投資はさらに拡大し、IT戦略の中核へと位置づけられようとしています。
自動化・統合テクノロジーが果たす役割の変化
かつて企業は、ERPやDBMS、開発ツールなどを単一ベンダーの統合スイートとして導入していました。
しかし、クラウドへの移行が進むにつれ、ビジネスプロセスに最適なベスト・オブ・ブリード(BoB)アプリを選択する傾向が加速。
現在では、中堅企業でも100以上、大企業では数千のアプリケーションを併用するケースも珍しくありません。
さらにモバイルアプリやIoTデバイス、生成AIなどの急速な普及により、
これらを既存の業務システムや分析基盤と連携させるニーズが急増しています。
このような多様化は、イノベーションと差別化の機会をもたらす一方で、
業務プロセスの観点からは複雑性の増大という課題も生んでいます。
従来のモノリシックなERPやCRMスイートの時代では、プロセスがコードに固定化されており、
変化への対応が極めて困難でした。
一方、BoB時代の今、業務機能は複数のSaaSアプリに分散しています。
そのため企業は、これらを「つなぎ直し」、エンドツーエンドの業務プロセスを再構築する必要があります。
これは一見コストと手間の増加に見えますが、実は違います。
BoB型アプリケーションは、従来スイートが持ち得なかった革新的な機能を提供し、
再構築の過程で企業は業務の最適化・革新・俊敏性の向上を実現できるのです。
成長を続ける「自動化と統合テクノロジー市場」
これらの課題に応えるため、テクノロジーベンダーはさまざまなツールを提供してきました。
それが「Automation and Integration Technologies Market(自動化・統合テクノロジー市場)」です。
Gartner®によると、企業がこの分野に費やした支出は2022年時点で約280億ドル。
2027年には520億ドルを超えると予測されています(図1)。
【図1】Automation and Integration Technologies Marketは2027年に520億ドル超へ
この市場は10のセグメントで構成され、それぞれ成熟度が異なります。
初期のMFT(ファイル転送)やB2Bゲートウェイ、メッセージキューなどは成長が鈍化していますが、
近年登場した「第三世代」――iPaaS、API管理、RPA、イベントストリーミング――は、
プロバイダーの活況と二桁成長率を維持しています。
中でも、iPaaS(Integration Platform as a Service)は圧倒的な存在感を示しており、
2022年の市場規模65億ドルから、2027年には174億ドル規模に達すると予測されています(図2)。
【図2】iPaaSが自動化+統合市場を牽引
iPaaS:自動化と統合の“スイスアーミーナイフ”
では、なぜiPaaSがこれほど急速に成長しているのでしょうか?
iPaaSは、アプリケーション、データソース、API、イベント、デバイスをハイブリッド/マルチクラウド環境で統合するための機能を統合的に提供するクラウドサービスです。
一般的に、iPaaSには次のような特長があります:
- ローコード開発環境を備え、ノンエンジニアでも自動化フローを構築可能
- AIコパイロット機能により、自然言語で統合フローを作成
- 幅広いユースケース対応(アプリ・データ連携、API公開、イベント処理、AI統合 など)
- ハイブリッド/SaaS双方の接続性を持つ柔軟なアーキテクチャ
簡単に言えば、iPaaSはこれまで別々のツールで担っていた
「アプリ統合」「データ統合」「プロセス自動化」「パートナー連携」などを1つのクラウド基盤で実現します(図3)。
【図3】iPaaSの機能構成と特徴
iPaaSが成功している理由
- 自動化・統合ニーズの爆発的増加
クラウド、モバイル、IoT、AIなどの進化により、新たな統合要件が急増。 - クラウドネイティブな設計
クラウド移行を進める企業にとって、クラウド上で動作するiPaaSは理想的な選択肢。 - 多様な業務ユースケースへの対応力
データ同期、業務プロセス自動化、APIエコノミー支援など、幅広く対応可能。 - 幅広いユーザー層の活用
ローコード+AI支援により、ITエンジニアだけでなく、
業務担当者やSaaS管理者も統合・自動化を実現。 - コストとスキル障壁の低減
中堅企業やLOB(事業部門)でも導入しやすく、従来のESBやETLに比べて投資効率が高い。
結果として、iPaaSは既存ツールのシェアを奪うだけでなく、
従来ツールでは対応できなかった領域にも拡大しています。
さらに、AIとの統合需要(AI Integration)が急速に伸びており、
今後5年間で「自動化+統合」シナリオの上位3カテゴリに入ると見込まれています。
CIOとITリーダーへの提言
iPaaSは、企業規模を問わず自動化と統合の中核技術として定着しつつあります。
CIOやITリーダーは、今こそ以下のステップを踏んで戦略的に取り組むべきです。
1. 戦略的視点で導入を位置づける
iPaaSを「統合基盤の中心」に据え、長期的な自動化戦略の柱とする。
2. 既存技術との共存を計画する
ESBやAPI管理など既存ツールとの連携を見据え、段階的に移行・統合を進める。
3. レガシー技術の置き換えを検討する
クラウド・API・AI以前に設計された古い統合基盤は、
モダンiPaaSへの移行が最適解となるケースが多い。
4. 将来を見据えたプラットフォーム選定
AI統合、業務部門による利用拡大、低運用コストといった要件を支える“Future-Proof”なiPaaSを選ぶ。
最後に:iPaaSは「いつ導入するか」の問題
自動化と統合は、もはや避けられない流れです。
これは“課題”ではなく、効率・俊敏性・イノベーションを生む機会です。
そしてiPaaSは、その中心となるプラットフォームです。
導入を「いつ」にするかーそれがCIOの次なる判断基準となるでしょう。
競合他社がすでに導入を進めている今、決断の遅れは競争力の低下を意味します。
図1・図2のグラフは、Gartner社の調査をもとにWorkatoが作成
出典:Gartner®, Forecast: Enterprise Infrastructure Software, Worldwide, 2021–2027, 4Q23 Update