なぜ今、「シャドーIT」が問題視されているのか
Gartnerは、2023年に企業のIT部門によるソフトウェア支出が前年比で約12%増加すると予測しています。
この背景には、従業員が日々の業務で求めるSaaSアプリケーションの数と種類が急速に増えている現実があります。
しかし、もしIT部門が社員のニーズに迅速に応えられない場合、社員自身が必要なアプリを購入・導入してしまうことがあります。
一見すると、業務効率を高める柔軟な対応のように見えますが、それが 「シャドーIT(Shadow IT)」 の始まりです。
「シャドーITとは、IT部門が管理・承認していないアプリケーションやデバイスを従業員が業務で使用することを指します。」
次章では、この行動がどのような形で発生し、なぜリスクを伴うのかを詳しく見ていきましょう。
シャドーITとは?
「シャドーIT」とは、IT部門が管理・所有していないアプリケーションやデバイスを従業員が業務で使用することを指します。
IT部門がそれらの存在を把握できないため、監視・対応が不可能となり、組織全体のセキュリティ体制に穴が生じることになります。
シャドーITにはさまざまな形態があります。代表的な例として:
- 私用PCやスマートフォン、外付けHDD・USBドライブなどを業務利用(BYODポリシーがない場合)
- 未承認のSaaSアプリの使用。外部データアクセスが発生し、マルウェア侵入リスクを増大
- 私用メールアドレスで顧客・同僚とやり取りし、機密情報が社外に漏洩
- ブラウザ拡張機能(広告ブロッカー等)の無断インストールによる企業データの改ざん
- 承認されていないクラウドストレージ(Google Drive、Dropboxなど)の利用によるデータ漏えい
シャドーITがもたらす主なリスク
1. セキュリティリスク
従業員の私用デバイスは、企業支給デバイスほど厳重な保護が施されていないケースが多く、以下のようなリスクを引き起こします:
- デバイス盗難時にログイン制限がなく、企業データが直接流出
- OSやアンチウイルスの更新が遅れ、脆弱性を突かれるサイバー攻撃
- VPN未利用による、公共Wi-Fi経由での通信傍受
2. コンプライアンスリスク
企業が信頼を得るためには、GDPR や SOC 2 Type II のようなセキュリティ基準の遵守が不可欠です。
シャドーIT自体が即座に監査不合格を意味するわけではありませんが、監視不能な領域を生み、コンプライアンス体制を脆弱にします。
3. 不要な支出
IT部門を経由せずにツールを導入した結果、既存のアプリと機能が重複しているケースも多く、ライセンス費用の重複が発生。
ITが全体像を把握していれば回避できたはずの「無駄な支出」が増加します。
4. サブオプティマルな(最適でない)ツール選定
ITチームは通常、ツール導入の際に以下を確認しています:
- 取得・保管するデータの種類
- セキュリティ認証・コンプライアンス対応状況
- 想定利用者とユースケース
- 他ツールとの比較(価格・UX・運用性)
しかし、社員が個別判断で導入する場合、このプロセスが省略されるため、最適でないツールを選び、脆弱なセキュリティ構成になるリスクがあります。
「ITがバックアップ戦略を立てていないシャドーITアプリは、永久的なデータ損失にさらされやすい。」
5. データ損失と統合リスク
シャドーITアプリは通常、バックアップや災害復旧計画の対象外です。結果として、データ消失や漏洩が起こった際の影響は甚大です。また、社内システムと統合してしまうことで、未承認アプリを経由した不正アクセスが発生する恐れもあります。
6. データ整合性の欠如
未管理ツールの利用は、データの一貫性を損ない、意思決定を誤らせることにつながります。
- 見込み客ではない顧客への営業メール送信
- 間違った従業員への福利厚生付与
- 古いデータに基づくレポート作成
このように、データ品質の低下は業務全体の信頼性を脅かします。
シャドーITの利点とは?
リスクが大きい一方で、シャドーITには一定のメリットも存在します。
- 生産性の向上:承認を待たずに業務を進められる
- 社員エンゲージメント向上:信頼・裁量が与えられることでモチベーションが上がる
- IT負荷の軽減:リクエスト対応の工数が減る
- プロセス改善の発見:利用傾向を分析することで、現場ニーズを把握
- 組織全体のパフォーマンス向上:現場に最適なツール利用が意思決定を加速
シャドーITを制御しながらメリットを享受するには?
Workatoの社内では、この課題に対し 「Firefighter」 というプラットフォームBotを導入しています。
このBotを通じて、社員は現在利用可能なアプリ一覧を確認し、アクセス申請をSlack上で直接行うことができます。
リクエストは上長承認→IT通知→自動プロビジョニングまで全自動で処理され、OneLogin と連携して実行されます。
Firefighterの利用フロー
- Slack上でFirefighterを開く:トップ画面で「Request for Apps」を選択。
- モーダル画面で申請内容を入力:申請者名・アプリ名・利用目的・日付などを入力。
- 上司に自動通知:承認 or 却下をワンクリックで処理可能。
- ITチームに通知:承認後、OneLogin経由で自動プロビジョニング。
- 申請者に完了通知:アクセスが承認された旨がSlackで届く。
OAuthとシャドーITの関係
OAuth は、実装方法によって「リスクにも対策にもなる」両刃の剣です。
過剰なアクセス権限をサードパーティアプリに与えると、企業データ流出のリスクが高まります。
一方で、正しく実装すれば、認証トークン管理とアクセス制御を強化し、コンプライアンス遵守を支援します。
- OAuthでは、ユーザー名やパスワードではなくアクセストークンで認証を行うため、第三者のアクセスを制限可能
- トークンの有効期限を短く設定し、不正利用リスクを低減
- 不審な動作を検知した際には、ITチームがトークンを即時失効可能
「シャドーITには課題もあるが、従業員の生産性向上や信頼関係構築など、多くのメリットもある。」
Workatoで「Firefighter」を実装してみませんか?
Workato は、Slack・Microsoft Teams・Workplace from Meta などで動作するカスタマイズ可能なプラットフォームBot「Workbot」を提供しています。
このWorkbotを活用すれば、あなたの組織でも「Firefighter」のような仕組みを構築し、
シャドーITのリスクを抑えながら自動化とガバナンスを両立 できます。
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