セキュリティ、スケーラビリティ、信頼性:モダナイゼーションを支える3つの柱
モダナイゼーションは、もはや「あればよい」取り組みではなく、企業にとっての必須課題です。
一方で、変革を加速する中でも、決して外せない前提があります。それは、スピードを優先するあまり、セキュリティ、スケーラビリティ、信頼性を犠牲にしてはならないということです。むしろ、この3つこそが、モダナイゼーションが事業価値につながるのか、それとも新たなリスクを生むのかを分ける基準になります。
このテーマについて、今年のWorkato WOW Conferenceで、同僚のMegan Hopkinsと、OXO、Hydro Flask、Ospreyなどのブランドを展開するHelen of TroyのIntegration Engineering ManagerであるKiran Sana氏とともにセッションを行いました。
妥協しないモダナイゼーションの全体像については、ぜひセッション全編もご覧ください。
企業が安全にモダナイズするために必要なこと
業界を問わず、企業が求める要件には驚くほど共通点があります。多くのエンタープライズ企業が重視しているのは、次のような要素です。
- グローバル展開への対応
データレジデンシー、データ主権、各地域のコンプライアンス対応 - 柔軟なデプロイメントオプション
分離環境を実現するVirtual Private Workato(VPW)や、セキュアなクラウド間接続を可能にするPrivateLink - ユーザーライフサイクル管理
SAML SSO、SCIM、JITプロビジョニングによる、安全性を保ちながらのスムーズなオンボーディング - 集中型ガバナンス
環境管理、ロールベースアクセス制御(RBAC)、カスタムロール、職務分掌による統制 - セキュリティとコンプライアンス
暗号鍵管理、外部シークレットマネージャー、BYOK、ログストリーミング、監査対応 - 信頼性とスケーラビリティ
稼働率保証、オートスケーリング、災害対策によるピーク時対応
これらは「あれば便利」な機能ではありません。
CIOやCISOが必ず確認する、エンタープライズ基盤のチェックリストそのものです。
Helen of Troy
グローバル規模でモダナイゼーションを進めた事例
Helen of Troyという社名よりも、Hydro Flask、OXO、Ospreyといったブランド名の方が広く知られているかもしれません。
しかし、その裏側には、グローバルに展開するD2C事業とB2B事業、複数のERP、そして地域をまたいで一貫した顧客体験を提供するという複雑な課題があります。
Kiran氏のチームにとって、モダナイゼーションは次のような現実的な課題を解決する取り組みでした。
グローバル展開とコンプライアンスの両立
EMEA地域へ展開する際、GDPR対応は絶対条件でした。
顧客の配送情報や請求情報はEU域内に保持しなければなりません。
Helen of TroyはWorkatoを活用して、EU専用のワークスペースを構築しました。これにより、地域規制へ対応しながら、受注から入金までの業務フローを止めることなく運用できました。結果として、新規地域への展開スピードを高めながら、法務・運用両面でのボトルネックを避けることができました。
季節変動による大規模ピークへの対応
Black FridayやCyber Mondayは、消費財ブランドにとって極めて重要な時期です。
Helen of Troyでも、eコマースサイトに数百万件単位の注文が流れ込み、それがOracleでのフルフィルメント処理を経て、物流や顧客対応のために各種サードパーティシステムへ連携されます。この一連の流れを支えているのがWorkatoです。
インフラを手動で増強したり、処理能力を細かく見積もったりする必要はありません。Workatoのオートスケーリングが需要の急増を自動的に吸収します。Kiran氏は次のように語っています。
「プラットフォームは非常に安定しています。ピークセールの期間中でも、追加のキャパシティ計画を立てることなく、すべてがスムーズに動作しました」
買収後の統合を止めずに進める
Helen of TroyがOspreyを買収した際、OspreyはNAVBC ERPを利用していましたが、グループ全体ではOracleが使われていました。
Workatoのオンプレミスエージェントを活用することで、チームはNAVBCを安全に既存ワークフローへ接続できました。その後、受注フローを止めることなく、段階的にOspreyのシステムをOracleへ移行しました。
この事例は、モダナイゼーションとM&A後の統合を並行して進められることを示しています。
スピードとガバナンスの両立
Helen of Troyが必要としていたのは、俊敏性を維持しながら統制を効かせるガバナンスモデルでした。
WorkatoのRBACを活用し、開発環境とテスト環境では広い権限を持たせつつ、本番環境へのデプロイはSOX要件に沿ってインフラチームだけが実行できるようにしています。
また、ビジネスアナリストには本番ダッシュボードの参照権限のみを付与し、受注件数やキャンペーン効果を確認できる一方で、レシピ自体は変更できないようにしています。
このアプローチにより、最小権限の原則を守りながら、各チームがビジネスのスピードに合わせて動けるようになりました。
つまり、Helen of Troyの事例は、妥協のないモダナイゼーションが現実にどう機能するかを示しています。
新市場への展開を速め、需要変動へ柔軟に対応し、レガシーシステムを安全に統合し、さらに各チームにイノベーションの余地を与える。そのすべてを、コンプライアンスや信頼性を損なうことなく実現しています。
制限するためではなく、力を引き出すためのガバナンス
Helen of Troyのような企業では、より多くの開発・運用担当者が仕組みを活用できるようにしつつ、統制も失わないことが求められます。
Workatoは、SSO、SCIM、JITプロビジョニング、きめ細かなRBACといったID管理・アクセス制御機能によって、これを実現します。
ガバナンスは、イノベーションのブレーキではありません。
適切なガードレールがあるからこそ、むしろ開発や展開のスピードを高めることができます。
組み込みで備わるセキュリティと可観測性
アクセス制御に加えて、企業はデータが守られていること、そしてすべてのアクティビティが監査可能であることに確信を持てなければなりません。Workatoは、多層防御の考え方に基づき、次のような機能を提供しています。
- 保存時・通信時の暗号化と、1時間ごとのキー更新
- AWS KMSを利用したBYOK対応
- AWS Secrets Manager、Azure Key Vault、HashiCorp Vault、CyberArkとの外部シークレット管理連携
- Splunk、Datadog、Sumo LogicなどのSIEMへのログストリーミング
- データ保持期間を制御できる柔軟なポリシー設定
- 異常や不正利用の検知に役立つAPIトラフィックミラーリング
これらにより、セキュリティチームはモダナイゼーションのスピードを落とすことなく、必要な可視性と統制を確保できます。
今後の展望
Enterprise HubとCommand Center
もう一つ、よくいただく質問があります。
それは「利用部門が増えていく中で、イノベーションの断片化をどう防ぐか」というものです。
そこで重要になるのがWorkato Enterprise Hubです。
Enterprise Hubは、オートメーション、レシピ、ドキュメントを集約した社内向けライブラリとして機能します。各チームはゼロから作り直すのではなく、すでにレビュー済みで信頼できる資産を検索し、再利用できます。
Hubによって、企業はガバナンスを維持しながらイノベーションを民主化できます。ベストプラクティスを一元化することでサイロ化を防ぎ、スケールしやすい運用基盤を作れます。
さらに、グローバル展開が進むと、複数インスタンスの管理は急速に複雑になります。そこで私たちはGlobal Command Centerを提供予定です。これは、すべてのWorkato環境にまたがる監視、ガバナンス、セキュリティを単一画面で管理できる仕組みです。
ITリーダーは、次のようなことを一元的に実行できるようになります。
- 地域をまたいだ一貫したポリシー適用
- 利用状況やパフォーマンス傾向の追跡
- エラーや運用状態の可視化
- ガバナンスとセキュリティ制御の集中適用
グローバル企業にとって、これにより、より高い確信を持って大規模なモダナイゼーションを進められるようになります。
安全かつ自信を持ってスケールするために
まとめ
モダナイゼーションは、スピードと安全性のどちらかを選ぶものではありません。
Workatoを活用すれば、企業は新市場への展開、季節要因によるピーク需要への対応、買収後の統合、そしてより多くの開発・運用担当者への権限移譲を実現しながら、厳格なセキュリティ要件とコンプライアンスを守ることができます。
Helen of Troyの事例は、その実践例です。
GDPR対応を前提にしながら、Cyber Weekの注文急増を自動スケーリングで処理し、レガシーERPを安全に統合し、俊敏性と統制のバランスを取ったガバナンスモデルを構築しました。
今後は、Workato HubやEnterprise Command Centerによって、安全にスケールする力はさらに高まっていきます。利用部門はより速く動けるようになり、ITリーダーは企業全体の可視性と統制を維持できます。
これこそが、妥協のないモダナイゼーションです。
信頼、スケーラビリティ、レジリエンスを土台にしながら、チームが本来注力すべきイノベーションへ集中できる状態です。
エンタープライズを安全にスケールする準備はできていますか。
Helen of Troyの担当者が語る実践例と、妥協のないモダナイゼーションの進め方を、ぜひセッション動画でご確認ください。
