2025年までに、アプリケーションソフトウェア支出に占めるクラウド統合関連の比率は、約8ポイント増加すると見込まれています。SaaS活用の拡大は、拡張性、利便性、セキュリティの面で大きなメリットをもたらします。一方で、急速なクラウド移行は、新たな課題も生み出しています。代表的なのがデータサイロです。
また、ハイブリッドクラウド統合プラットフォーム市場は今後大きく成長すると予測されており、今後数年で年平均成長率20%超が見込まれています。この背景には、クラウドサービスの利用拡大と、オンプレミス環境とクラウド環境をシームレスに接続したいというニーズの高まりがあります。
新しいアプリを導入すると、他部門のメンバーはそのアプリやそこで蓄積されるデータを把握していないことがあります。その結果、重要なインサイトを見逃したり、同じデータを重複入力したり、必要な情報を探すために複数のアプリを行き来したりする状況が生まれます。
こうした課題を解消する手段が、クラウド統合です。本記事では、クラウド統合とは何か、どのようなメリットがあるのか、そしてどのような方法で実装できるのかを解説します。
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クラウド統合とは
クラウド統合とは、クラウドアプリケーション同士、あるいはクラウドアプリケーションとオンプレミスシステムを接続することです。接続後は、アプリケーション間でデータを同期したり、自動化やAPIを活用した構成を実装したりできます。
クラウド統合には、データをアプリケーション間でスムーズに移動させるデータ統合と、アプリ同士がリクエストやコマンドを実行し、簡単なワークフローを動かせるようにするアプリケーション統合の両方が含まれます。
関連記事:iPaaSとは?基本からわかりやすく解説
クラウド統合の種類
クラウド統合には主に3つのパターンがあります。
クラウド to クラウド
クラウドアプリケーション同士を接続する形です。
クラウド to オンプレミス
クラウドアプリケーションとオンプレミスシステムを接続する形です。
ハイブリッド統合
クラウドアプリケーション同士の接続と、クラウドとオンプレミスの接続を組み合わせた形です。
クラウド統合の代表的なユースケース
クラウド統合のイメージをより具体的にするために、代表的なユースケースを見ていきましょう。
ケースと課題を同期する
カスタマーサクセスマネージャーが顧客対応を進める中で、サポートやエンジニアリングなど他チームの対応が必要な課題を見つけることがあります。
「クラウド統合を活用すれば、CSMは課題を簡単に関係者へ共有できるようになります」
例えば、CSMが使うCRMと、サポートチームが使うITSMツールを統合させれば、CRMでケースが作成されたタイミングで、ITSM側に課題を自動登録できます。これにより、サポート担当者は必要な課題をすぐに把握し、迅速に対応を開始できます。
関連記事:ポイントツーポイント統合とは
リードをCRMへ自動登録する
営業とマーケティングが足並みをそろえて動くためには、同じ情報を共有できる状態が欠かせません。
そのため、マーケティングオートメーションとCRMを統合し、新しいリードがマーケティングオートメーション側に追加された際に、CRMにも自動で追加されるようにします。既に存在する場合は重複登録を防げます。
関連記事:ソフトウェア統合の具体例
新しい連絡先を複数システムに作成する
顧客企業の担当者は、異動や退職、昇進などで変わっていくものです。ERPシステムでも、請求書送付先などの観点から、最新の担当者情報を維持する必要があります。
例えば、ITSMツールとERPシステムを統合し、ITSM側で新しい連絡先が作成されたときに、ERP側にも同じ連絡先を自動作成することができます。
関連記事:クラウド to クラウド型アプリケーション統合とは
契約締結時に関係者へ通知する
電子署名プラットフォームは、採用、契約、購買などさまざまな用途で利用されています。
契約がすべての当事者によって締結されたら、関係者へ迅速に共有する必要があります。共有が遅れると、次のアクションに着手するタイミングも遅れてしまいます。
そのため、SlackのようなビジネスコミュニケーションツールとDocuSignのような電子署名プラットフォームを接続し、契約が締結された瞬間に指定チャンネルへ通知を投稿するワークフローを構築できます。通知には契約の主要情報や署名済み書類へのリンクを含めることもできます。
課題をスムーズにエスカレーションする
サポートチームでは、解決できない課題をエンジニアリングチームへ引き継ぐ必要が出てきます。
例えば、JiraのようなITSMツールとGitHubを統合し、Jiraで新しい課題が作成され、その課題がエスカレーション対象として設定されたら、GitHub側にも対応するIssueを自動で作成することができます。そのうえで、Jira側にはエスカレーション済みであることを示すメモやGitHubへのリンクを残せます。
クラウド統合のメリット
クラウド統合は、チームの業務効率を高め、ミスを減らし、既存のツール活用価値を高めます。
1. SaaSアプリの価値を最大化できる
組織で導入するクラウドアプリが増えるほど、収集されるデータの種類も増えます。クラウドアプリ同士、またオンプレミスシステムとも統合することで、より多くの部門がこのデータを活用できるようになります。
例えばSalesforceを、マーケティング、サポート、営業、財務、ITなどのシステムと統合させれば、より多くの社員が顧客データや見込み客データへアクセスし、自分の業務に活かせるようになります。
2. レガシーシステムを置き換えずに活用できる
レガシーシステムには依然として大きな価値がある一方で、全面刷新には高いコストがかかります。クラウド統合を活用すれば、レガシーシステムを維持したまま、そのデータをクラウドアプリケーション側で活用しやすくなります。
例えば、レガシーシステムとSnowflakeのようなクラウドデータウェアハウスを統合することで、データ分析をより柔軟に行えます。
関連記事:レガシーシステムとは何か
3. データサイロを解消できる
データサイロは、情報アクセスの遅れやデータ活用の制約を生みます。クラウド統合によってアプリケーション間でリアルタイムにデータ共有できれば、必要な情報を必要なタイミングで使えるようになります。
4. 業務プロセスを効率化できる
手作業によるデータ入力を減らすことで、業務プロセスを最適化できます。これにより社員は、より重要な業務に集中しやすくなります。
5. 人的ミスを減らせる
手作業によるデータ入力は非効率なだけでなく、請求ミスや誤った権限付与など、コストのかかるミスにつながります。クラウド統合を導入すれば、こうした作業を自動化し、エラーの発生を抑えられます。
6. コスト削減につながる
クラウド統合を使うことで、高価なオンプレミス機器やその保守コストを抑えられます。必要なリソースを必要な分だけ使えるため、予算を最適化しやすくなります。さらに、クラウドサービスにはアップデートやセキュリティ対策が含まれることが多く、IT運用負荷も軽減できます。
クラウド統合でよくある課題
クラウド統合は有効ですが、実際の導入は簡単ではありません。代表的な課題を見ていきましょう。
1. 実装が難しい
多くのクラウド統合プラットフォームは専門知識を必要とするため、実際に統合を担当できる人が限られがちです。その結果、担当者に負荷が集中し、統合案件のバックログが増えることがあります。
2. セキュリティとコンプライアンスのリスク
クラウド統合では、機密性の高い業務データを扱うことが多いため、適切なガバナンスが欠かせません。データ保護が不十分だと、規制違反による罰則や、顧客・社員・投資家からの信頼低下につながる可能性があります。
3. 次に取るべきアクションがわかりにくい
クラウド統合によってデータにアクセスできても、そのデータをどう活用すればよいかわからないケースがあります。例えば、CRMに新しいリードが入っても、どのナーチャー施策を適用すべきか、どんなメッセージが適切か判断できず、機会損失につながることがあります。
4. 計画不足
十分な計画なしにクラウド統合を進めると、想定外のコスト、システム停止、データ移行トラブルなどが発生しやすくなります。既存インフラとどう整合させるかを含めた明確な戦略が必要です。
5. 選択肢が多すぎる
統合市場には多くのツールがあり、似たようなメッセージを打ち出していることも多いため、自社に合ったソリューションを選ぶのが難しい場合があります。
クラウド統合のベストプラクティス
クラウド統合のメリットを最大化し、課題を回避するために、以下の実践ポイントが役立ちます。
1. アプリケーション内部に統合ロジックを作り込まない
アプリの中に統合ロジックを実装すると、非常に専門的なスキルが必要になります。適任者を採用するのも難しく、コストも高くなります。さらに、そのアプリを将来使わなくなった場合、統合ロジックごと失われてしまいます。
そのため、サードパーティの統合ミドルウェアや汎用スクリプト言語を活用し、特定のアプリに依存しすぎない設計が重要です。
2. 重要データについては内部APIエンドポイントを活用する
複数の部門で頻繁に利用されるデータについては、サードパーティのミドルウェアを使って内部APIエンドポイントを作成すると効果的です。
これにより、ソースアプリや宛先アプリのAPIから一段抽象化されたレイヤーを作ることができ、特定アプリへの依存を減らせます。
3. APIで準リアルタイムのデータフローを構築する
多くの業務では、データが速く動くほどプロセス全体の品質が上がります。そのため、API統合を活用し、可能であればWebhookを使ってリアルタイムでデータを流す設計が望ましいです。
関連記事:API統合を成功させる方法
クラウド統合の実装方法
クラウド統合を実装する前に、まず前提を整理しておきましょう。
クラウド統合に必要な要件は?
最低限の要件として、統合対象のうち少なくとも1つのアプリケーションがクラウド上に存在する必要があります。それ以外の要件は、統合対象アプリ、実現したいユースケース、ビジネス目標によって変わります。
クラウド統合スペシャリストとは?
社内または外部のクラウド統合スペシャリストは、統合機会の洗い出し、設計、実装、運用保守までを支援します。
クラウド統合サービスとは?
サードパーティの事業者が提供する統合サービスです。ベンダーによって異なりますが、データ統合、アプリケーション統合、B2B統合、IoT統合などを企画・設計・実装・保守まで支援してくれる場合があります。
クラウド統合ソリューションの選択肢
クラウド統合を実装する際には、主に5つの選択肢があります。
1. iPaaS
iPaaSは、クラウド上からさまざまなアプリケーションやオンプレミスシステムを接続できる統合プラットフォームです。
メリット
- GDPRやHIPAAなどのデータ保護基準を満たしやすい
- 事前構築済みコネクタで統合構築を早められる
- 1つの場所で統合の構築と障害対応ができる
デメリット
- 一定の技術知識が必要
- ベンダーごとの差がわかりにくい
- エンドツーエンドのワークフロー自動化には弱い場合がある
関連記事:iPaaSの主なメリット
2. ネイティブ統合
SaaSアプリが標準機能として提供する統合を利用する方法です。
メリット
- 多くの場合、低コストまたは追加費用なしで使える
- ベンダーが活用支援を行ってくれることがある
デメリット
- 統合先や機能が限定的
- ベンダー側で機能拡張や障害対応が十分でない場合がある
- エンドツーエンドのワークフロー自動化には向かない
関連記事:ネイティブ統合を使う理由と注意点
3. ポイントツーポイント統合
自社のエンジニアがカスタムコードやオープンソースライブラリを使って統合を構築する方法です。
メリット
- サードパーティ利用に伴うリスクを減らせる
- 適切なエンジニアがいれば高品質に構築・保守できる
- サポートを受けやすい場合がある
デメリット
- 構築・保守に多くの工数がかかる
- システム全体へスケールしづらい
- 属人化しやすい
- エンドツーエンドのワークフロー自動化には向かない
4. ESB
ESBは、アプリケーションが共通の通信バスに接続することで、データ変換と共有を行うアーキテクチャです。
メリット
- 統合の構築、監視、障害対応を中央で行える
- 多数のアプリケーション接続に向いている
- サービス間メッセージを標準化できる
デメリット
- 高い技術力が必要
- バスに障害が起こると全体へ影響が出る
- エンドツーエンドのワークフロー自動化には向かない
5. エンタープライズオートメーションプラットフォーム
このタイプのプラットフォームは、アプリ、オンプレミスシステム、データベース、ファイルサーバーなどを統合しながら、ビジネスプロセス全体をコード不要で自動化できます。
このアプローチには次の特長があります。
- 部門横断で統合と自動化を構築しやすい
- 見積から入金、従業員オンボーディング、インシデント管理など、コア業務の変革を進めやすい
- ビジネスチャット上で使えるエンタープライズチャットボットを活用できる
- APIエンドポイントの作成、管理、提供ができる
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まとめ
ここまで見てきた通り、クラウド統合は単なる流行語ではありません。スピード感のある現在のビジネス環境で競争力を維持するための重要な基盤です。
本記事では、クラウド統合の基本を解説しましたが、実際にはここからさらに多くの可能性が広がります。クラウド統合を深く理解していくことで、業務の変革、部門間の統合強化、そして新たな価値創出につなげることができます。
「クラウド統合は、変化の速い現代において企業が競争力を維持するための重要な手段です」
クラウドは、成長と効率化を実現するための強力な基盤です。これからの業務変革に向けて、ぜひクラウド統合を前向きに検討してみてください。
