CIOやITリーダーと話していると、多くの企業がエンタープライズ自動化の取り組みを、複数のCoE(Center of Excellence)によって推進していることに気づきます。これらのCoEは通常、特定のユースケースや技術プラットフォームごとに分かれています。
この体制は、リソースやスキルを整理するという意味では合理的ですが、より統合されたアプローチの方が、長期的にはより大きな効果をもたらします。
本記事では、複数のCoEを持つことの課題と、なぜ単一のエンタープライズ自動化CoEが最適なアプローチである場合が多いのかを説明します。まずはCoEの役割と、なぜ多くの企業が複数のCoEを持つようになったのかを整理しましょう。
統合・自動化CoEの役割の変化
多くの企業において、CoEは統合や自動化の「工場」のような存在です。
アナリスト、アーキテクト、ソフトウェアエンジニアから構成され、企業全体の統合課題に対応します。
主な役割は、他のITチームや業務部門が統合プロセスを構築できるよう支援することです。
例えば:
- 新しいデジタルコマースプロジェクトでは、統合設計・開発・運用をCoEが担当
- ERPモダナイゼーションでは、統合アーキテクトや自動化エンジニアが支援
このようなモデルは「中央集権モデル」と呼ばれ、効率的ではありますが、
複数のチームが限られたCoEリソースを奪い合うため、組織のボトルネックになることがあります。
その結果、プロジェクト遅延や不満が生まれ、
企業によっては「Integration CoE」という言葉自体がネガティブに捉えられることもあります。
最近では、CoEを「実行部隊」ではなく支援・促進チームとして位置付ける考え方が広まっています。
つまり、CoEは統合や自動化を自ら実装するのではなく、
プラットフォーム、トレーニング、ベストプラクティス、ガバナンスなどを提供し、
各部門が自ら統合や自動化を実行できるようにするのです。
この「民主化モデル」は、中央集権モデルよりも俊敏でビジネス成果志向のアプローチとして注目されています。
なぜ複数のCoEが存在するのか
アプリケーション統合、データ統合、業務自動化の取り組みは、コンピュータの歴史初期から存在していました。
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、
B2B/EDI、ERP、データウェアハウスなどの大規模プロジェクトをきっかけに、
統合や自動化を専門に扱うCoEが設立されるようになりました。
その結果、
- B2B統合CoE
- アプリケーション統合CoE
- データ統合CoE
など、複数のCoEがIT部門内に独立して存在するようになりました。
その後、クラウド、API、IoT、イベント、RPAなど新しい技術が登場するたびにCoEが増え、
現在では多くの企業が複数のCoEが乱立する状態になっています。
複数CoEがもたらす3つの課題
複数のCoEが必ずしも悪いわけではありませんが、多くの場合、メリットよりもデメリットが大きくなります。
主な問題は以下の3つです。
1. 効率の問題
デジタルプロジェクトでは、アプリ、データ、プロセス、API、IoTなど複数の統合課題が同時に発生します。
異なるCoEが別々の方法論やアーキテクチャを持っている場合、
それらを調整するのは非常に非効率で、全体最適が難しくなります。
2. 効果の問題
ある統合課題が、アプリ統合、データ統合、API統合のどれに属するのか判断が難しい場合があります。
その結果、たまたま予算やスキルがあるCoEに任せることになり、
最適ではない技術が使われるケースがあります。
例えば:
- APIがあるのにRPAで画面スクレイピング
- リアルタイム連携にETLツールを使用
などです。
3. コストの問題
複数CoEは以下を生みます:
- 重複した人材
- 重複したプラットフォーム
- 組織運営コスト
- 意思決定プロセスの複雑化
結果として、技術と組織の両面でコストが増加します。
単一のエンタープライズ自動化CoEは最適解か?
私の意見では、答えは「Yes」です。
ただし、単一CoEとは、すべての開発を1チームが行うという意味ではありません。
重要なのは以下が一元管理されていることです:
- 戦略
- アーキテクチャ
- ガバナンス
- 運用
- デリバリーモデル
つまり、責任と方針が一つに統合されていることが重要です。
単一CoEのメリット
1. 効率
新しいユースケースが出た際、
CoEが最適な技術・人材・アプローチを迅速に決定できます。
2. 効果
iPaaS、API管理、RPAなど複数の技術を組み合わせた最適なアーキテクチャを設計できます。
3. コスト
技術プラットフォームや人材の重複を削減でき、
自動化全体のコストを可視化できます。
エンタープライズ自動化CoE導入の4ステップ
単一CoEを導入するには段階的なアプローチが必要です。
Step 1
既存CoEの数、技術、スキル、成熟度を評価
Step 2
統合しやすい領域(Low-hanging fruit)から統合
Step 3
エンタープライズCoE候補を選定
Step 4
段階的に統合(Big Bangではなく段階的)
まとめ
大企業では単一CoEの導入は簡単ではありません。
組織構造、予算、権限、政治的な問題などが障壁になります。
その場合は、
- フェデレーテッドCoE
- バーチャルCoE
といったモデルも検討できます。
しかし一般的には、
単一のエンタープライズ自動化CoEは、効率・効果・コストのすべてにおいて大きなメリットをもたらします。
そのため、多くの企業にとって検討する価値のあるアプローチと言えるでしょう。

