各部門は、それぞれ異なる業務アプリケーションを活用していることが一般的です。
ただし、適切なソフトウェア統合が行われていなければ、これらのツールは個別最適のまま分断され、本来の価値を十分に発揮できません。適切な統合ソリューションを活用することで、システム同士をシームレスにつなぎ、ワークフローを効率化し、生産性を高めることができます。さらに、こうした取り組みは単なる効率化にとどまらず、イノベーションの促進にもつながります。
たとえば、営業担当者はCRM、電子署名ツール、営業支援ツールを使っています。マーケティング部門は、マーケティングオートメーション、イベント管理ソフト、CRMを活用しています。財務部門では、ERP、調達管理ツール、給与計算ソフトなどが欠かせません。
これらのアプリケーションはどれも業務に不可欠ですが、適切に統合されていなければ、その価値は限定的です。重要なデータがサイロ化し、社員が必要な情報にリアルタイムでアクセスして行動することが難しくなります。
本記事では、ソフトウェアを効果的に接続するために、具体的な統合プロセスや代表的な統合ソフトウェアの種類を解説します。まずは、ソフトウェア統合そのものの定義から見ていきましょう。
ソフトウェア統合とは
ソフトウェア統合とは、個別に存在する複数のソフトウェアや機能を1つのまとまりのある仕組みとして連携させ、相互にデータをやり取りしながら動作できるようにすることです。異なるアプリケーション同士を接続することで、企業内のデジタル環境全体でスムーズな連携と一貫した機能提供が可能になります。
こうした統合は通常、各アプリケーションが持つAPI(Application Programming Interface)を介して行われます。接続後は、アプリケーション同士がリアルタイム、もしくはそれに近いタイミングでデータを共有し、相互に更新できるようになります。実際には、CRM、ERP、HRシステム、マーケティングプラットフォームなど、異なるシステム間でデータを同期・連携させる役割を担います。統合がなければ、アプリケーションはサイロ化し、データの重複、手入力、非効率なワークフローが発生しやすくなります。
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ソフトウェア統合とシステム統合の違い
ソフトウェア統合は、複数のソフトウェアアプリケーションを連携させ、データ共有やワークフローの効率化を実現することに焦点を当てています。
一方、システム統合は、より広いITインフラ全体を対象に、ソフトウェアだけでなくハードウェアも含めて接続し、全体をひとつの仕組みとして機能させることを指します。
つまり、ソフトウェア統合はシステム統合の一部であり、システム統合のほうがより広範な対象とプロセスを含みます。
システム統合には、主に次のような種類があります。
- アプリケーション統合
オンプレミスまたはクラウドのアプリケーション同士を、主にAPIを通じて接続し、データ同期や自動化を実現する方法です。 - データ統合
社内外のシステムからデータを抽出し、クレンジング、変換を経てデータウェアハウスに格納し、分析ツールで活用できるようにする方法です。 - レガシーシステム統合
API、ファイル連携、データベースコネクタなどを使って、レガシーシステムとクラウドアプリケーションをつなぐ方法です。 - B2B統合
自社のアプリケーション、データ、ワークフローを外部企業と連携させる方法です。
なぜソフトウェア統合が必要なのか
ソフトウェア統合が必要とされる理由はいくつもあります。ここでは代表的なものを見ていきます。
生産性が向上する
社員が普段使っているアプリケーションの中でリアルタイムデータにアクセスできるようになれば、より迅速に、より確かな判断ができるようになります。統合によって、社員の生産性は20%以上向上する可能性があるとも言われています。その結果、より付加価値の高い仕事に時間を使えるようになります。
営業担当者であれば、有望な見込み顧客へすばやく適切なアプローチができます。マーケティング担当者であれば、リードをすぐに適切なナーチャリング施策へ回せます。売掛金管理担当者であれば、請求書をより迅速に送付できます。
従業員体験と顧客体験が向上する
社員は、複数のアプリケーション間でデータを何度も入力し直したり、必要な情報を探すためにアプリを行き来したりする負担から解放されます。その結果、時間をより戦略的で思考を要する仕事に振り向けることができます。
また、社員がより顧客対応に集中できるようになることで、顧客体験も向上します。実際、統合されたシステムによって対応スピードが上がり、パーソナライズされたやり取りが可能になることで、多くの企業が顧客満足度の向上を実感しています。
社内の連携がスムーズになる
統合によってデータサイロが解消されると、社員は必要な情報を同僚に都度依頼しなくても、自分で同じ情報にアクセスできるようになります。これにより、依頼の待ち時間や認識齟齬が減り、部門をまたいだ連携がしやすくなります。
その結果、チーム同士が足並みをそろえやすくなり、ビジネス成果につながる協働が進みます。
アプリケーションの価値が高まる
アプリケーションがより多くのデータを扱えるようになると、利用者はその機能をより広く、より高度に活用できるようになります。統合によって、個々のアプリケーションの価値も拡張されていきます。
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ソフトウェア統合戦略をどう設計するか
ソフトウェア統合戦略を策定する際は、次のステップで考えるのが効果的です。
1. ビジネス目標を明確にする
時間削減、ミス削減、コスト削減、イノベーション促進など、何を達成したいのかをまず明らかにします。
2. ユースケースを整理する
前述の通り、統合にはさまざまな種類があります。自社のビジネスニーズに最も適したアプローチを選ぶことが重要です。
3. 非機能要件を優先順位づけする
可用性、拡張性、ガバナンス、セキュリティなど、統合に求める非機能要件を明確にします。
4. 提供モデル、ガバナンス、必要スキルを決める
この判断は、最初に設定した目標に大きく左右されます。たとえば、効率化やコスト削減を重視する場合は、IT部門やSIerが実装・保守を担う形も選択肢です。一方、業務プロセス変革を重視するなら、業務部門の関与も必要になります。
5. 前提条件に最も適した統合ソリューションを選ぶ
たとえば、イノベーションを目的とし、業務部門も構築に参加したいのであれば、ローコード/ノーコードUXを備えた統合ソリューションが適しています。
また、統合戦略は一度作って終わりではありません。ビジネス目標や市場環境の変化に応じて見直していく必要があります。
ソフトウェア統合を実装する方法
ソフトウェア統合に取り組むと決めたら、次に統合のアプローチを選ぶ必要があります。ここでは代表的な方法を紹介します。
1. ポイントツーポイント統合
ポイントツーポイント統合は、自社の開発リソースを使って、アプリケーション同士をカスタムコードで直接接続する方法です。
メリット
- 外部ベンダーに依存しなくてよい
- 統合数が少なく、接続先APIも比較的シンプルな場合には十分機能することがある
デメリット
- 開発と保守に多くの時間がかかり、開発者が本来注力すべき業務に手が回らなくなる
- 特定の開発者への依存が高まり、退職や異動時のリスクが大きい
2. ネイティブ統合
アプリケーションベンダーが標準で提供している連携機能を使う方法です。
メリット
- ベンダーから高品質なサポートを受けられる可能性が高い
- 既存契約内で使える、もしくは低コストで導入できることが多い
デメリット
- 連携したいアプリケーションの多くが対象外であることが多い
- 時間の経過とともに、ベンダー側の優先度によって改善や保守が十分に進まない場合がある
3. ESBミドルウェア
「通信バス」と呼ばれる中央基盤にアプリケーションを接続し、そのバスがデータのやり取りを担う方式です。
メリット
- 複数アプリケーションを接続できる
- APIを持たないレガシーなオンプレミスシステムとも連携しやすい
デメリット
- アーキテクチャが複雑で、あとから新しいアプリケーションを追加しにくい
- バスが単一障害点になりやすく、停止時の影響範囲が大きい
4. iPaaS
iPaaSは、アプリケーション連携やデータフローを実現するためのクラウドベースプラットフォームです。すべての統合を単一のインターフェースから管理・制御できます。
iPaaSには、次のようなクラウド統合機能があります。
- リアルタイムデータ同期
- 主要なクラウドアプリ向けの事前構築済みコネクタ
- 事業成長に応じて柔軟に拡張できるスケーラビリティ
- どこからでも統合管理できる利便性
メリット
- ベンダーがデータ保護やガバナンス機能を提供していることが多い
- よく使われるアプリケーションとの接続を迅速に構築できる
デメリット
- 利用には一定の技術スキルが必要で、多くの社員が構築者にはなれない
- 統合の上に業務自動化まで構築できない場合がある
5. エンタープライズオートメーションプラットフォーム
この選択肢は、上記のメリットを取り込みつつ、それぞれの弱点も補えるアプローチです。
この種のプラットフォームは、ローコード/ノーコードUXを提供するため、IT部門だけでなく業務部門も自部門の課題に応じた構築が可能になります。さらに、次のような機能を備えています。
- Quote-to-Cash、リードルーティング、インシデント管理など、エンドツーエンドの自動化
- Slackなど、従業員が日常的に使うコミュニケーションツールに自動化を直接届けるボット
- ロールベースアクセス制御やエンタープライズ向け鍵管理などのガバナンスとセキュリティ
- SaaSやオンプレミスシステム向けの数百の事前構築済みコネクタと、多数の自動化テンプレート
このタイプのプラットフォームについて詳しく知りたい場合は、エンタープライズオートメーションのリーダーであるWorkatoのデモをご覧ください。
どのソフトウェアを統合すべきか
どのソフトウェアを統合すべきかに、すべての企業に共通する正解はありません。事業課題や技術スタックは企業ごとに異なるからです。ただし、多くの企業では外部のSaaSアプリケーションが中心となるため、まずはそれらを統合対象として検討することが多いでしょう。
ここでは代表的なユースケースをいくつか紹介します。
1. HRISとITSM間で新入社員情報を同期する
採用が決まったら、できるだけ早くオンボーディングを始めたいものです。
そのために、HRISとITサービス管理ツールを統合しておけば、新入社員がHRISに追加されたタイミングで、ITSMにも自動的に情報を登録できます。IT部門はそこから必要なオンボーディングチケットを作成し、初日までに対応を進められます。
たとえば、NamelyをHRIS、ServiceNowをITSMとして使っている場合は、次のような流れを作れます。
- Namelyに新入社員が追加される
- ワークフローが起動する
- ServiceNowに対象ユーザーが存在するか確認する
- 存在しなければ、Namelyの情報をもとに必要な項目を登録する
2. イベント管理ツールとCRM間で申込者情報を同期する
イベント申込後、営業担当がすぐにフォローアップしたいというケースはよくあります。
Eventbriteのようなイベント管理ツールとSalesforceのようなCRMを統合すれば、次のような流れを自動化できます。
- イベント申込が入る
- ワークフローが起動する
- 参加者がSalesforce上に既存アカウントとして存在するか確認する
- 存在しなければ、新規アカウントとして登録し、申込フォームの情報を適切な項目へマッピングする
3. CRMとカスタマーサポートツール間で新規顧客情報を同期する
商談が成立し、見込み顧客が正式な顧客になったら、サポート部門はすぐに受け入れ準備を始める必要があります。
SalesforceのようなCRMとZendeskのようなサポートツールを接続しておけば、次のようなワークフローを実装できます。
- Salesforceで新しいアカウントが作成される
- ワークフローが起動する
- Zendeskに同じ組織情報が存在するか確認する
- 存在しなければ、必要な項目とともに新しい組織として登録する
関連記事:レガシーシステムと最新アプリケーションを統合する方法(英語)
まとめ
ソフトウェア統合とは、異なるシステムを連携させて、ひとつのまとまりとして機能させることです。その実現には、適切な計画、適切なツール選定、そしてデータ整合性やセキュリティへの対応が欠かせません。
重要なステップとしては、要件整理、統合設計、テストがあり、導入後も継続的な運用と改善が必要です。さらに、AIやクラウド統合の進展を踏まえた将来対応も重要になってきます。
こうした統合と自動化をエンタープライズレベルで進めたい場合は、Workatoのようなエンタープライズオートメーションプラットフォームが有力な選択肢になります。



