「PoCなし」で本番直行――オリックス銀行がWorkatoとAIエージェントで年間約2,500時間の業務を解放

「PoCなし」で本番直行――オリックス銀行がWorkatoとAIエージェントで年間約2,500時間の業務を解放

Department

IT/DX promotion

Region

Tokyo, Japan

Industry

Finance/Banking

About

ATMや営業店舗を持たず、インターネットを中心に金融商品・サービスを提供するオリックス銀行は、システムのクラウド化率95%を達成した一方で、システムの乱立による業務の属人化という新たな課題に直面していました。データの受け渡しはコピー&ペーストが常態化し、特定の熟練者なしには業務が成り立たない状況が、組織全体の生産性向上を阻んでいました。

同行が選んだ解決策は、サイロをなくすのではなく「つなぐ」こと。エンタープライズ向け自動化・AI統合プラットフォームのWorkatoを戦略基盤として採用し、AIエージェントが複数システムを横断的に操作することで、担当者は最終判断に集中できる環境を実現しました。「PoCなし、本番運用を前提に進める」方針のもと、わずか4名・約3か月で本番リリースを達成し、年間約2,500時間の工数削減を見込む成果を上げています。現在は150以上のレシピが稼働し、四半期あたり100万以上のタスクが実行されています。今後3年間で全社70エージェントの展開を目指し、AI活用の本格フェーズへと踏み出しています。
(※この事例は2026年7月時点での情報です。)

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Stat Block v2|ORIX Bank

ビジネス上の課題

オリックス銀行は、ATMネットワークや営業店舗を持たず、インターネットを中心に金融商品・サービスを提供する銀行として、テクノロジー活用に積極的に取り組んできました。2017年末頃からシステムのクラウド利用の検討を開始し、2019年6月にはAWS上で本番システムを稼働。情報系・勘定系・OAシステムと種類を問わずクラウド化を推進し、2025年度末時点でクラウド化率95%を達成しています。「AIファースト」戦略を掲げ、デジタル変革の最前線を走り続けています。

しかしデジタル化の進展とともに、現場では新たな課題が顕在化しました。システム第二部 部長の高橋 裕樹氏は当時をこう振り返ります。

「各部署がそれぞれの業務要件に合わせた最適なシステムを導入した結果、一つの業務を完遂するためにN個のシステムやサービスを使わなければならない状況になってしまいました。匠がシステムを操作して業務を成り立たせているような世界です」
データの受け渡しはすべて人手によるコピー&ペーストで、マニュアルの熟知と高いオペレーション能力が必要とされ、特定の担当者への業務属人化が生産性向上の大きな障壁となっていました。同行はまず、コールセンター業務のAIワークフローシステムをすべて内製するパイロット施策に挑みました。業務面では一定の成果を得たものの、4部署10名超・4か月以上の開発を要し、他業務への横展開が極めて困難という新たな課題も露呈しました。

この経験から同行は3つの方向性を検討。「コンウェイの法則」に基づき、組織のサイロ化を無理に解消しようとするのではなく、既存システム間に柔軟な「回路」を構築できる仕組みの整備を最善策として採用しました。

採用理由

この方針を実現するプラットフォームとして選定されたのがWorkatoです。最終的にWorkatoが選ばれた理由は主に3点あります。

第一に、スキルレベルの適合性です。「できることは内製でやる」という方針のもと、ローコード/ノーコードのUIがエンジニアだけでなく事業部門メンバーも開発に参画できる敷居の低さを実現していました。第二に、既存システムへの接続性です。SalesforceやSnowflakeなどへのコネクタが豊富なうえ、AWS上の既存システムともオンプレミスエージェント機能で接続できます。第三に、WorkatoのAIエージェント「Genie (ジーニー)」との親和性です。AIが各種システムを自律的に操作し結果だけを人に返す「UIがいらない世界」が実現できます。また、GEARSフレームワークという、企業が段階的に自動化を成熟させていくためのベストプラクティス設計や、AutomationHQによる多層ワークスペース管理機能も、厳格なガバナンスが求められる金融機関として重要な選定理由となりました。

活用内容と導入効果

「PoCは禁止」という経営方針のもと、2026年4月に本番リリースされました。Amazon ECS上のオンプレミスエージェント (レシピをオンプレミス環境につなぐ仕組み) を通じてWorkatoと社内システムを接続し、Amazon BedrockをAI推論基盤として、利用者はWorkato GOを通じてAIエージェントと対話できる環境を構築しています。

【事例①:営業審査業務支援エージェント】

年間約2万件のローン審査に伴い、営業社員は物件チラシの情報を手作業でデータ化し各種システムを照会するという複雑な作業を担っていました。Workato GenieベースのAIエージェントがこれを代替し、情報収集から判断用レポート生成までを自動化。年間約2,500時間の工数削減を見込んでいます。開発はシステム部員・ユーザー部員各2名の計4名、約3か月という小規模・短期間で実現しました。

ORIX Bank Diagram 1 (Draft v1)

【事例②:書類形式チェックエージェント「totsuGOくん」】

稟議書類と案件シートの整合性確認だけで管理職の稼働時間の約3分の1が費やされていた課題を解消しています。AIが事前チェックを担うことで、管理職は与信判断の妥当性といった本質業務に集中できるようになりました。ローンチ当日には「AIエージェントはシステムではなく人の代替」という考えのもと、キャラクターに社員証をつけたイラストを作成し、ぬいぐるみを現場に「授与」する入社式が開催されました。

ORIX Bank Diagram 2 (Draft v1)

今後の展望

現在150以上のレシピが稼働し、100万以上のタスクが実行されています。3年間で全社35部署に計70のエージェントを展開する計画を、パイロット・先行・一般の3段階で進めています。ガバナンス面では「自然死を前提に作る(有効期限付き)」などの原則を定め、IT部門は「作らないが管理する」役割に徹しています。人材育成では短期集中トレーニングを各事業部門で展開し、AI活用を主導できる人材の輩出を目指しています。将来的にはエージェントが増えた段階で「仕事振り分けエージェント」を設置するマルチエージェント化も構想しています。

ROIの捉え方についても同行独自の視点があります。工数削減効果と投資額の単純比較ではなく、「AIの進化が加速する2〜3年後の世界にすぐ移行できる組織の適応力を今育てること」こそが真の投資意義だと高橋氏は考えています。Workatoを単なる自動化ツールではなく全社のデータ活用とAI推進を支える戦略的プラットフォームと位置づけ、銀行業務の高度化と従業員の働き方改革を同時に実現する取り組みは、今まさに本格展開フェーズへと踏み出しています。

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